感情に溺れる経営者、技巧に溺れる経営者

事業計画策定の支援をしていると、

経営者には大きく分けて2つのタイプ

がある事に気がつく。


1つ目のタイプは、感情先行型。


このタイプの経営者は、自社の事業の将来像を身振り手振りを交えながら、自信たっぷりに大きな展開を語る。客観的に聞いていると、「それは実現がむずかしいのではないだろうか?」と思うこともある。しかし、話している本人には一点の曇りもない。何故だか自信に満ちあふれている。


2つ目のタイプは、技巧先行型。


知識先行型、とも言える。

このタイプの経営者は、計画と組んだり、論理的に考えることなどが得意だ。日々のデータの記録なども得意。リードタイム分析などはお手のもの。キャッシュフローが何たるかも理解しており、非常に堅い計画を語る。非常に現実的、場合によってはシニカルすぎる自己評価をしてしまうため、大きくドライブ(=成長)する事業計画が描けないことが多い。


この2つに完全に分けられるものではないが、どちらかに偏りがあるのが通常だ。

あなたは、どちらのタイプだろうか?



感情先行型は大きく成功もし、大きく失敗もする


感情先行型の強みはその「直感力」だ。「この事業は儲かるかも!」と感じる直感力は群を抜いている。そしてイメージをどんどん膨らませていき、とてつもないスケールの事業を語り始める。


だが、問題は詰めが甘いところ。


イメージとしては、非常に儲かる事業であっても、その実現のためには、幾つかのハードルをきちんと越えていかなければならない。


感情先行型の経営者には、①経験の浅さ、②知識の浅さ、③詳細をイメージする力の不足、④エビデンス(証拠)を集める力の不足などが見られ、これらの要因により感情先行型の経営者は、事業上のハードルを想定したり、具体的な道筋をイメージすることが出来ない。


以前、ある経営者がいた。この経営者は完全な感情先行型だった。


彼はまだ年も20代で若く、バイタリティにあふれていた。自分が勤務していた会社が属する業界の周辺業界で、ある生鮮食品を扱えば「とんでもなく儲かる!」と吹聴していた。「この事業を開始したら、すぐにベントレーに乗れますよ!」「毎月利益で○億が残りますよ!」というのが口癖だった。その生鮮食品を扱う事業を独立して開始したが、開始して3ヶ月でその事業が頓挫してしまった。


理由は簡単。仕入は「知人経由で安く手に入る」と言っていたが、実は実際に仕入れを行ってみると、想定していた程度までは安くなく、価格競争力もない。また安定供給があまりできないことも分かった。売り先についても、「一気に大規模チェーンに卸せば一発ですよ!」と言っていたのだが、大規模チェーンは更に安く仕入れることができ、相手にもされなかったのだ。


感情先行型は、きちんと「詰め」を行っていかないと大きく失敗する。一方で大きく成功することが出来る感情先行型の経営者は、必ず技巧先行型のナンバー2をおいている。自分の弱点を、ナンバー2に補完してもらうためだ。このナンバー2の存在が感情先行型のブレーキにもなり、防御にもなる。


でも、このナンバー2は口うるさい。

彼の苦言を聞き入れることが出来て、はじめて感情先行型は成功に向かう事ができる。



技巧先行型は失敗しにくいが、現状打破もしにくい

技巧先行型の強みは、ベースとなる会計の知識などもあり、さまざまなタイプの事業に携わって来ていたりして経験豊富なことである。経営企画の出身者、大手の出身者などに多い。しかし一方で、大きく「夢」を語ることは苦手だ。


今までの経験から、いつの間にか見えないシーリング(天井)を作ってしまっており、「独立して1年目だと、売上はこの位。2年目だと、行ってもその1.5倍くらいかな。」と「自分の中の尺度」に囚われてしまう。人は自分が想像できないことは達成が出来ない。経験が豊富なために、「耳年増」になってしまい、最初から「小さくまとまった事業計画」を作ってしまいがちだ。


技巧先行型は実はナンバー2に向いている。トップである場合には、現状維持になってしまうことが多いが、大きな失敗をすることは少ないので、今まで通りに進めればいい。


しかし、自分の企業を大きくしていきたいと考えているのならば、あなた自身の見えないシーリング(天井)を外す必要がある。


このシーリング(天井)を外すことは、容易なことではない。多くの場合、技巧先行型は「自分の経験」しか信じないため、その経験を越える想像をすることが難しい。


このような場合には、処方箋は2つだ。1つは、自分がこうなりたい、こう進みたいと思える経営者を見つけること。その経営者の歩んできた軌跡をトレースしてみること。そしてもう1つは、あえて、自分のシーリング(天井)を越えた目標を設定してみることだ。まずは売上目標だけでいい。


自分のシーリング(天井)を越えているから、相当な違和感を抱くはずだ。そして、そこからブレイクダウンしていく。「この計画は達成できない」と思うのではなく、「達成するためにはどうするか?」を考えるのだ。技巧先行型であれば、その方策をブレイクダウンして考えていくことは容易なはず。ブレイクダウンしていき、調整していき、修正して、腹に落ちて来たら、あなたのシーリング(天井)は上に上がっているはずだ。


あなたはどちらのタイプだったろうか?


どちらのタイプが正しい訳でも、間違っている訳でもない。


自分のタイプがどちら寄りなのかを認識し、それを補正していけばいいこと。重要なのは「両方の視点を持つ」ということ。偏りが失敗を生み出すのだから。


文責:神永将行

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